ESP32用開発ボードを手持ちのブレッドボード(サンハヤト製 SAD-101)を使ってみようと取り付けても、下のように空きスペースがほとんど無いので回路が組みづらくて不便;
と、そこで、KiCADの操作方法を習得するがてら、ブレッドボードを有効に使えるようにESP32用ブレッドボード変換基板をKicadを使って設計し作ってみました。下のが完成形です。
ESP32用ブレッドボード変換基板 – スイッチサイエンス (switch-science.com)
このESP32用ブレッドボード変換基板の設計例として、KiCADの使い方を今回まとめてみました。
ESP32開発ボードはいろいろある
と、まず仕様から考えます。ESP32開発ボードには、結構、いろいろなサイズがあってピン数も違うため、ターゲットとするESP32開発ボードを絞り込んでみます。
以下の5種類のESP32開発ボードを使えたら便利ですかね。そうすると極数は19極あれば、事足りて、ピッチ幅は1000milと900milの2パターン用意すればよさそうです。
形状は以下のようにピンを中央に配置してブレッドボードを有効に使えるようにします。
KiCADの操作
1.ソフトウェアのインストール
① Kicadのインストール
まず、KICadをインストールします。
Kicadのダウンロードサイトを開きます。OS毎に選択できるようになっているのでWindowsパソコンなら”Windows”を選択して指示に従ってインストールします。
https://www.kicad.org/download/
② 自動配線ツール Freerouter のインストール
Kicadで配線を手動で引くと手間も時間もかかります。自動で配線を引く便利なツールがあります。今回は説明がここまでいかないかもしれませんが、一応。
https://github.com/freerouting/freerouting/files/1282814/freeroute.jar.zip/
Zipファイルを解凍してfreeroute.jarを任意の場所に保存します。
Freerouterを使用するためには、別途、Java実行環境が必要なので併せてインストールします。
https://www.java.com/ja/download/
2.新規プロジェクトの作成
① スタートメニューにKicadが追加されています。Kicadを選択して起動します。
② ツールバーの”テンプレートから新規プロジェクトを作成します”をクリックします。
“ARDUINO UNO”を選択して”OK”をクリックします。
既存のテンプレートを見本として使います。
③ 新規プロジェクト フォルダーにファイル名”ESP32_Adapter”を入力して、”保存(S)”をクリックします。
④”ESP32_Adapter”のプロジェクトが作成されます。
3.見本の確認
Kicadを全く使用したことのない方は、見本でどんなののを作成するのかを確認できます。
① 回路図レイアウトエディタ
ツールバーの”回路図レイアウトエディタ”をクリックすると、見本の回路図が開きます。ARDUINO UNOの拡張ボード用のテンプレートになります。
② PCBレイアウトエディタ
ツールバーの”PCBレイアウトエディタ”をクリックすると、回路図レイアウトエディタに連動した見本の基板(PCB)図面が開きます。
③ 3Dビューワー
メニューバーの”表示(V) – 3Dビューワー”を選択します。
見本の基板(PCB)図面の3D表示が確認できます。
4.回路図作成
実際にESP32用ブレッドボード変換基板の回路図を作成してみます。
① メニューバーの”回路図レイアウトエディタ”をクリックします。
回路図が開きます。
② “回路図レイアウトエディタ”の動作環境を設定します。
メニューバーの”設定(r) – 設定(P)…”を選択します。
③ “設定”ダイアログが開きます。
“共通”を以下のように設定します。
“Eeschema”を以下のように設定します。
“表示オプション”を以下のように設定します。
“OK”をクリックして保存します。
④ 図枠の設定
ツールバーの”ページ設定を編集”をクリックします。
ページ設定が開くので登録したい内容を入力して”OK”をクリックします。
登録した内容が図枠に表示されます。
⑤ 部品の呼び出し、配置
ESP32用ブレッドボード変換基板のピンヘッダ ソケットがストレートで接続できるように回路図を作成します。
“シンボルに配置”をクリックします。
“シンボルを選択”が表示されます。
ESP32用ブレッドボード変換基板に使用するピンヘッダ ソケット”Connector_GenericのConn_01x19″が1列の19ピンで5個あるので5個分選択します
ピンヘッダ ソケットを以下のように配置します。
リファレンスでダブルクリックして番号を以下のように設定します。
“J2″と”J5″のコネクタ向きを左右逆にしたいので、”J5″コネクタにカーソルを合わせ右クリックして”角度 – 垂直(Y)軸に沿ってミラー”を選択します。”J2″も同じように操作します。
“J2″と”J5″のコネクタ向きが左右逆になりました。
⑥ バス配線
コネクタ間の配線は1本ずつワイヤを引いていると複雑で見にくいため、他ピン部品の配線を一本のバスラインにまとめて配線する”バス配線”を使います。
バス配線の手順を説明します。
まず、繰り返し配置の設定をします。最後のワイヤ引きを繰り返し配置することで手早くワイヤを引きます。メニューバーの”設定 – 設定”を選択して”設定”ダイアログの”Eeschema”を選択して、赤枠部分を表示の設定にします。
次に右側の”ワイヤを配置”をクリックします。すると、ワイヤが引けるようになるのでコネクタの1番ピンから下図ぐらいワイヤを引いて右クリックして”ワイヤを終端”を選択します。
あとは、カーソルを2番ピンに合わせて、”INS”キーを押すことで、同じ長さのワイヤがが引けます。19番ピンまで同じように繰り返します。
以下のようにワイヤが引けます。
次に右側の”ネットラベルを配置”をクリックします。”ラベルのプロパティ”が表示されるので、ラベルに”D1″と入力して”OK”をクリックします。
ネットラベル”D1″が表示されます。同様に2~19番ピンまでネットラベル”D2″~”D19″を入力します。カーソルを合わせて”INS”キーを押すことで、D2以降の数字がインクリメントされて入力できます。
以下のようにネットラベルがD1からD19まで入力されます。以後、連番ラベルを付与した接続線を D[1..19] のように表記します。
ワイヤが少し長いので調整します。D[1..19]のワイヤを選択して右クリックして”ブロックをドラッグ”を選択します。
すると、ワイヤの長さが調整できるようになるので、以下の長さに調整します。
次に右側の”ワイヤバスエントリーを配置”をクリックします。すると、ワイヤバスエントリーが配置できるようになるので、D1端子の右端をクリックしてワイヤバスエントリーを引きます。
D2~D19端子にも”INS”キーを押すことで、ワイヤバスエントリーを引きます。
次にJ2コネクタで作成したD[1..19]のワイヤのブロックをJ5コネクタにコピーします。
J2コネクタで作成したD[1..19]のワイヤをすべて選択して右クリック – “ブロックを複製”を選択します。
選択したD[1..19]のワイヤをJ5コネクタにコピーします。
次にバスを引きます。右側の”バスを配置”を選択して以下のように始点から終点までバスを引きます。
次にバスラインにD[1..19]のラベルを2か所つけます。右側の”ネットラベルを配置”を選択して、ラベルのプロパティに”D[1..19]”と入力して”OK”をクリックしてD[1..19]を配置します。
以下のように配置して右側のコネクタは完成です。
同様に左側も点線内にようにJ1コネクタからJ4コネクタを作成します。左側のラベルは”E[1..19]”にします。
分岐しているJ3コネクタにバスを引きます。右側の”バスーバスエントリを配置”を選択して赤枠の様に引きます。バスエントリの向きが逆になる場合は、右クリックして”バスエントリ形状のセット”を選択してバスエントリの向きを調整します。
あとは、バスを引いて、ネットラベル”E[1..19]”を同様に配置します。
赤枠部分のコネクタのラベルが重なって見にくいため、ラベルをそれぞれ移動します。
“J4”,”J5″がリファレンス、”Conn_01x19が定数 と分かれているので、それぞれを選択して右クリックして移動を選択して見やすい位置に移動します。
以下のように移動します。次に上手くバス配線が引けているか確認します。
右側の”ネットをハイライト”を選択してD1をクリックします。接続されている端子がピンクで表示されます。正常に接続されていることが確認できれば、バス配線は完成です。
⑦ “ARDUINO UNO”回路図の削除
見本の”ARDUINO UNO”は必要ないので削除します。”ARDUINO UNO”の回路図全体を選択して右クリック – “ブロックを削除”を選択します。
以下のように削除されます。
⑧ スペーサー用ホール追加
スペーサー用のホールを追加します。右側の”シンボルを配置”を選択して検索に”mounting”と入力します。”MountingHole”を選択して”OK”をクリックします。
“MountingHole”を以下の位置に配置します。
リファレンス”H?”をダブルクリックして”Referenceフィールドを編集”のテキストに”H1″と入力して”OK”をクリックします。
次はラインとコメントを配置します。右側の”図形ラインまたはポリゴンを配置”を選択してラインを引きます。
右側の”テキストを配置”を選択して、”テキストのプロパティ”のテキストに”Hole”を入力してテキストサイズを3mmにして”OK”をクリックします。
テキスト”Hole”を配置します。これでスペーサー用ホールが追加できました。
⑨ フットプリントの関連付け
以下のように回路図が完成しました。PCBレイアウト(基板図面)の作成を行うために回路図とフットプリントの関連付けを行います。
上側にある”回路図シンボルへPCBフットプリントを関連付けする”を選択します。”フットプリントを関連付け”ダイアログが表示されるので、フットプリントを以下に指定して”OK”をクリックします。
H1 : MountingHole : MountingHole:MountingHole_3.2mm_M3_ISO7380_Pad
J1 : Conn_01x19 : Connector_PinSocket_2.54mm:PinSocket_1x19_P2.54mm_Vertical
J2 : Conn_01x19 : Connector_PinSocket_2.54mm:PinSocket_1x19_P2.54mm_Vertical
J3 : Conn_01x19 : Connector_PinSocket_2.54mm:PinSocket_1x19_P2.54mm_Vertical
J4 : Conn_01x19 : Connector_PinHeader_2.54mm:PinHeader_1x19_P2.54mm_Vertical
J5 : Conn_01x19 : Connector_PinHeader_2.54mm:PinHeader_1x19_P2.54mm_Vertical
以下のように”フットプリントを関連付け”ができます。
⑩ エレクトリカル・ルール・チェック(ERC)の実行
最後に作成した回路図に不備がないかをエレクトリカル・ルール・チェック(ERC)を実行して確認します。上側の”エレクトリカル ルールのチェックの実行”を選択して、”エレクトリカル ルール チェック(ERC)”ウィンドウの”実行”をクリックします。
エラーリストに何も表示されず、メッセージに”終了”と表示されれば、回路図の配線接続に不具合等が無く正常に作成されていることが確認できます。
以上でESP32用ブレッドボード変換基板の回路図が完成しました。次にプリント基板(PCB)図面を作成していきますが、今回はここまで。
それではKiCAD回路図🙌